神経根パルス高周波法

神経根パルス高周波法(PRF:pulsed radiofrequency)とは42度C以下で高周波を間欠的に発生させることで電場を発生させ、神経に作用し、鎮痛作用をもたらす方法である。パルス高周波法は神経組織の変性を起こす可能性は極めて低く合併症が少ないとされています。
神経根パルス高周波法は500キロヘルツの高周波電流を20ミリ秒出力、480ミリ秒休止を2回/秒の頻度で電磁場をかけて痛みを軽減させる治療法です。高周波熱凝固法とは異なり温度は42度C以上にはなりません。熱により神経組織が凝固する訳ではありません。電磁場による作用が大きいとされています。

施行手順

  1. レントゲン透視下で行います。体位は通常の神経根ブロックと同じで、腰部・胸部ならうつむき(枕を入れて水平にします)か無理なら痛い方を上にした斜めになります。頚部なら痛い方を上にした斜めになります(斜位法)。
  2. 左ふくらはぎに対極板を貼りつけます。
  3. 皮膚を消毒し、局所麻酔薬を針の刺す場所に浸潤させます(痛み止め)。
  4. 電極用の針(スライター針)を皮膚からレントゲン透視を見ながら刺入します。神経根ブロックと同じ神経根が脊椎から出てくる所に針先を誘導して行きます。
  5. 造影剤を注入し神経根であることを確認します。この時に痛い所に放散痛が生じることがあります。低電圧(0.3V以下)で刺激する事があります。目的とする神経が支配している筋肉の攣縮(ピクピク動く)や再現痛(いつもの痛い所に痛みが走る)を確認します(当院では施行しないこともあります)。抵抗値測定で神経根組織であることを確認します。
  6. 局所麻酔薬を注入して、数分後にパルス高周波法を開始します。施行中パルス波に同期して筋肉収縮が出たり、神経に沿って痛みが発生する事があります。その時は出力を低下させるか、開始をもう少し待ちます。当クリニックでは360秒間施行します。従前は120~180秒でしたが360秒施行が有効性の高い事が確認されています。6分間身体を動かさずにじっとしている事が一番つらいかもしれません。
  7. 当院では通常より濃度の高い局所麻酔薬を少量ですが使います。やや長い目に休んで頂きます。

右第5腰神経根パルス高周波法

電磁場の鎮痛作用の機序はまだ明らかになっていませんが、1)神経細胞の微細構造を変化させ、神経細胞の機能を変化させる2)痛みに対する下降性抑制系を賦活させる3)炎症性サイトカイン産生を抑制する、などが報告されています。
鎮痛効果はすぐに現れることもありますが2-3週経ってから効果が出てくることも多いように思います。
このブロックは効果に蓄積作用があり複数回施行することも必要なこともありますが保険診療上の制約があります。

適応症

  • 難治性頸肩上肢痛、腰下肢痛(局所麻酔薬での神経根ブロックは効果を認めるがすぐに痛みが再発する人)
  • 帯状疱疹後神経痛、複合性局所疼痛症候群、癌性疼痛
  • 通常の高周波熱凝固法では施行不可能である胸腹部の帯状疱疹後神経痛、脊髄
  • 圧迫骨折などによる根性肋間神経痛
  • 後頭神経痛、慢性膝関節痛(将来の可能性)

現在は当院の人的・時間的な制約や入院設備がない事などにより神経根ブロックは効果を認めるが再発する腰下肢痛に限定しております。

副作用・合併症

筋力低下、知覚障害、運動麻痺は高周波熱凝固に比べて生じにくいがゼロはない。
穿刺に伴う感染、出血、穿刺部痛。神経炎、神経損傷、くも膜下穿刺、血管穿刺、対極板接触不良による熱傷など通常の高周波熱凝固法と同じような合併症があります。
他に神経根ブロックと同様の合併症の可能性があります。

きのしたペインクリニックではパルス高周波法は月曜日、火曜日、金曜日の15時30分枠の最後に原則として1人のみ行います。

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