神経根ブロック

神経根ブロック(ルートブロック)とは脊椎(背中の骨)から出る神経の根元に直接もしくは神経周囲に局所麻酔薬とステロイド(炎症や浮腫をとる薬)を注入して神経の伝達を一時的に遮断して痛みを取るブロックです。また神経根ブロックに先立って選択的神経根造影を必ず行います。神経を造影することによって痛みの原因となっている神経の走行、圧迫等の異常がないかも同時に調べられます。
神経根ブロックはレントゲン透視をみながら行います。ブロックにかかる時間は場所、人によって異なりますが約10分程度かかります。一番大事なことはブロックする時の体位がきちんととれるかどうかです。体位がとれれば数分以内に終了します。

ブロック時の体位

頸部神経根ブロック(後方斜位法)--痛い方を上にした横向きで背中に枕を入れてそれにもたれかかる様な斜めの体位。
胸部・腰部神経根ブロック(腹臥位法)ーーうつむきで針を刺す場所を水平にするため胸もしくは腹部の下に枕を入れます。
他に斜位法(痛い方を上にした斜めの体位)もあります。

神経根ブロックの手順

  1. 体位がとれれば透視を見ながら針を刺す場所を決めます。
  2. 皮膚消毒を行い、清潔シーツを被せます。
  3. 局所麻酔薬で皮膚から針を刺す場所に浸潤させます(痛み止め)。
  4. ブロック針を刺入します。
    (A:胸部・腰部神経根ブロックB:頸部神経根ブロック)
    A:神経近傍に針先が来たら造影剤を注入し神経根周囲に針先があり神経根に沿って造影剤が硬膜外腔に流入する事を確認します。圧迫感を感じることがあります(この時神経根に直接当たって放散痛がおこる可能性はあります!)。
    B:神経に当たると「ピリッー」といつものところに痛みが走ります(再現痛)。そして造影剤を注入します。痛みのあるところに放散痛、圧迫感があります。
  5. レントゲン写真を撮影します。
  6. 局所麻酔薬とステロイドの混合液を注入します。注入し始めると「スッー」と痛みがなくなります。
  7. ブロック針を抜いて終了します。
  8. 処置台で約1時間程安静にしていただきます。腰部神経根ブロックでは下肢が、頸部神経根ブロックでは肩から手がしびれています。動きにくい事もありますが時間が経てば必ず戻ります。手、下肢が十分に動き、しびれがとれたら帰宅していただきます。
  9. 痛みの走った部位に2-3日痛みやしびれが残る事がありますがほとんどの方はその数日後におさまります。おさまらない時はその由を医師に申し出てください。この神経根ブロックは効果があれば劇的ですが、硬膜外ブロックと異なりそう頻回には出来ません。学会基準では10~14日空けて1ヶ月間に3回を限度とする、となっています。神経根ブロックは有効であるが効果が持続しない場合は神経根高周波熱凝固法を行う事があります。

合併症

1:頸部神経根ブロック

椎骨動脈穿刺による出血--動脈に針が通るとしっかり圧迫しないと内出血を起こす事があります。

2:胸部神経根ブロック

気胸・・・肺の方に針が行った時に起ります。胸痛、呼吸が苦しくなる。
レントゲン写真を撮影します。

3:頸部、胸部、腰部神経根ブロック

くも膜下穿刺--針が脊椎の内側に入り過ぎると稀に起る。造影剤、テストの薬で幅広くブロックが起こります。
神経根の損傷、神経炎--ブロック前から神経根の障害が高度な人、短時間に頻回に神経根ブロックを行うと起る事があります。
他に感染などの合併症が起る事もあります。

右第6頸神経根ブロック(後方斜位法)

右第6頸神経根ブロック(正面像)

右第5胸神経根ブロック

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