硬膜外ブロック

硬膜外ブロックとは脊椎(背中の柱状になった骨、背骨)の中の硬膜外腔(脊髄神経を取り巻いている硬膜の外側にあるスペース)に局所麻酔薬を注入して脊髄神経の伝達を一時的にブロック(遮断)する方法です。ペインクリニックでは非常に多く施行されている手技です。
交感神経、知覚神経、運動神経を一時的に遮断します。この注射を繰り返すことにより首から下のいろいろな痛みやしびれを治して行きます。
この注射を受けますと、次のような症状が起こります。

  1. ブロック(遮断)された神経の支配している部分が温かくなる。
    (血管が拡張して血液の循環が良くなる。これは交感神経が遮断されたためです)
  2. 皮膚の感覚が鈍くなった感じがする、痛みが鈍くなる。しびれた様な感じがする。
    (腰からの注射なら足腰、胸からの注射なら胸腹、首からの注射なら上肢。これは知覚神経が遮断されたためです)
  3. 局所麻酔薬の濃度が濃い時は腰からの注射なら足が、首からの注射なら手や上肢が動きにくくなることがあります。これは運動神経が遮断されたためです。

しかし、これらの症状は一時的で局所麻酔薬の作用が切れると元に必ず戻りますので心配いりません。この注射を受けた方は約30〜40分程度ベッドにて安静にしていただきます。これでもしびれが残っている方は回復するまで休んで頂きます。必ず、この注射によるしびれなどは回復しますので心配しないでください。ただ自動車や自転車の運転は危険ですので十分注意してください。
局所麻酔薬の効果がなくなっても痛みの程度が低下した状態が続くなら「硬膜外ブロックは有効」と判断します。これは痛みを伝える神経を強力に遮断すると遮断がなくなっても痛みの軽減が続くという「痛みの悪循環」がなくなるからと考えられています。通常の痛み止めの薬とは作用機序が全く異なります。
痛み止めの薬は全身作用がありますが硬膜外ブロックは局所麻酔薬の作用する部位のみですので全身作用はありません。

合併症

  1. 硬膜穿刺針(ブロック針)が硬膜より深い所に入り、くも膜下に局所麻酔薬が入ることがあります。多くの場合、医師が気づきます。薬が効き過ぎることになります。テストの薬をまず入れますので、すぐに身体が温かくなったりしびれが出て来たらすぐ申し出てください。テストの量では効き過ぎにはなりません。また、頭痛が出現することがあります。横になっておれば頭痛はなく、立てば頭痛が出現します(立位性頭痛)。
  2. 出血、血腫血の固まりにくい人、血が固まらないようにする薬を飲んでいる人に、稀に起こることがあります。
  3. 感染局所麻酔薬には抗細菌作用がありますが、持続硬膜外ブロックでは起こることがあります。
  4. 神経根穿刺ブロック時に強い放散痛があります。ステロイドを注入して神経炎を予防します。

硬膜外ブロックの適応(どういう疾患におこなうか?)

1.全部位に関する疾患

帯状疱疹、帯状疱疹後神経痛、悪性腫瘍による痛み、手術後創部痛

2.頸部硬膜外ブロック

頸椎椎間板ヘルニア、頸椎症性神経根症、頸椎椎間関節症、外傷性頸部症候群、頸肩腕症候群、上腕神経叢神経炎、頸性頭痛、胸郭出口症候群、上肢の血行障害、上肢複合性局所疼痛症候群、上肢幻視痛や断端痛、 など

3.胸部硬膜外ブロック

開胸後症候群、軟治性肋間神経痛、胸椎椎間板ヘルニア、胸部神経根症、圧迫骨折後痛、外傷後胸部痛、胸椎椎間関節症、腹部内蔵痛、乳房切除後症候群、など

4.腰部硬膜外ブロック

腰椎椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、腰椎分離滑り症、椎間板性腰痛、根性膝部痛、圧迫骨折後痛、腰椎椎間関節症、下肢複合性局所疼痛症候群、下肢幻視痛や断端痛、下肢の血行障害、下腿潰瘍、月経困難症、通風発作、など

透視下頸部硬膜外ブロック

透視下右頸部硬膜外ブロック

5.仙骨部硬膜外ブロック

尾骨痛、肛門部痛

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